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この記事では、リストカットに隠された本当の心理や原因、なぜやめられないのか、専門家の見解や体験談を交えながら解説します。悩みを抱えるご本人はもちろん、家族や周囲の方も理解と具体的な対応策が分かります。

本記事では、リストカットの心理的な背景や原因、やめられない理由について解説し、専門家の見解や体験談を交えながら、具体的な対応策も紹介します。ご本人はもちろん、家族や周囲の方にも理解しやすいよう丁寧にまとめました。

リストカットに隠された心理と本質

リストカット(自傷行為)は、「弱さ」や「異常」ではありません。心の深い苦しみや葛藤が形を変えて現れる現象です。本人は強い生きづらさを感じていたり、誰にも言えない感情の波に悩むことが多いでしょう。「なぜやめたいのにやめられないのか?」と自身を責める方もいらっしゃいます。まずは、自分の本当の気持ちや苦しみに、少しずつ目を向けることから始めてください。

リストカットは「生きるため」の行動―感情の意味

リストカットをする方は「もう苦しみたくない」「消えたい」と感じるものの、本気で死を望むわけではない場合も多いです。「今のつらい感情をどうにかしたい」という焦りや“生への本能”が働いていることも少なくありません。切った後、一時的にエンドルフィンと呼ばれる脳内物質が分泌されて、感情が少し落ち着いたり、現実感が戻ったように感じる場合もあります。自己救済行動や自己懲罰、自己否定など、複雑な感情が絡み合っています。

自傷行為と自殺企図の違い

自傷行為(リストカット)と自殺企図は目的が異なります。自傷行為は「死にたい」ではなく、「生きるため」「感情の嵐をやりすごすため」に行われることが多数です。不安や罪悪感から逃れたいケースが多く、自殺企図は「本当に死を望む」意思があります。「アピール目的」と誤解されやすいこと自体が、社会的な偏見の表れです。

やめたいのにやめられない―心理的葛藤と依存

「もうやめたい」と望みながらもリストカットを繰り返してしまう背景には、一時的に安心感を得られる脳の依存反応が隠れています。
さらに、否認防衛内的批判者(自分を責める心の声)が強く、「誰もわかってくれない」「どうせ無理」と感じてしまいがちです。自分の本音や痛みを話せる環境がなければ、リストカットが‟唯一の逃げ道”になることもあります。

社会的偏見と孤立

「リストカットは異常」「精神的に弱い人がすること」などの偏見は根強く、助けを求めたくても声に出せないという方が多いです。社会的審判恐怖こころの壁が孤独感を強める原因にもなります。心が繊細で感受性が強い人ほど、傷つきやすい性質があるため、決して「普通」「強さ」の物差しで判断しないことが大切です。

リストカットは心の「SOSサイン」

リストカットは多くの場合、“助けてほしい”というサインです。ですが、自分でも行動の理由がわからないことがあります。これは感情ラベリング(気持ちを言葉にすること)の難しさや、感情調節の障害が影響している場合も。非言語的に「今の気持ちに気づいてほしい」というメッセージを表している場合もあるのです。

アレクシサイミア・感覚解離が及ぼす影響

アレクシサイミア(感情失認)感情・体感解離があると、自分の感情や身体感覚が分断され、「何も感じない」「心と身体がバラバラ」といった状態に。不安や辛さを自覚できないまま、リストカットで“実感”しようとすることも見られます。神経の発達症状や感覚情報処理の障害も影響し、周囲と気持ちを共有できず孤独が深まりやすいです。

体験談から見える本当の苦しさ

リストカット経験者は「つらすぎて自分を傷つけるしかなかった」「やめてもまた不安や孤独で繰り返してしまった」と話します。誰にも頼れず、深い孤独や自己否定のスパイラルで苦しむことが多いですが、「誰かに本音を聞いてもらえた」「小さな支援が支えになった」という声も。一人ではない、共感や理解の場があるだけで、回復の始まりになるのです。

テーマ 背景・特徴 関連疾患・支援
リストカットは「生きるため」 自己救済・自己懲罰、エンドルフィン分泌、社会的偏見、心理的葛藤・依存 境界性パーソナリティ障害、うつ病、PTSD、発達障害/カウンセリング・セルフケア
自傷行為と自殺企図の違い 生きる意志の有無、感情調整のための行動、社会的理解不足 精神科受診・危機対応・アウトリーチ支援
やめたいのにやめられない理由 脳の依存反応、否認防衛、信頼関係の欠如、心理的安全基地の不在 心理療法・置換スキル・マインドフルネス
社会的偏見 自己否定感、社会的孤立、羞恥心の強さ 啓発活動・家族療法・ソーシャルサポート

リストカットの苦しさは決して一人だけのものではありません。小さな一歩で大丈夫ですので、自分の気持ちを確かめたり、信頼できる人に話してみてください。「傷つきやすさ」はあなたの生きる力の一つです。

リストカットと心理的な仕組みの重なり

リストカットがやめられない理由は、意志の弱さや性格が原因ではありません。複数の心理メカニズム、脳内化学反応、過去の経験や周囲の環境が絡み合い、それぞれ違った影響を生んでいます。「なぜ自分はやめられないのか」と悩む方へ、専門的な仕組みとリアルな感情をつなげて説明します。

脳の「快感物質」と依存症状

リストカットの直後には心が軽くなる、現実感が戻ると感じることがあります。これはエンドルフィンという脳内物質の働きです。痛みで分泌されるこの物質が短時間だけ苦しみをやわらげ、「セルフケア」のように作用し、繰り返してしまいやすくなります。

主な用語の解説

  • エンドルフィン:痛みやストレスで分泌される、鎮静&快感作用のある脳内物質
  • 脳内報酬系:「うれしい」「ホッとした」時に働く仕組み。痛みによる刺激も報酬として機能

感情調節障害・愛着理論と防衛機制

自分の感情が強すぎたりコントロールできない「感情調節障害」はリストカットの背景でよく見られます。また、幼少期の関係性や「心の安全基地」の不足が、自分の本音を抱え込むクセをつくる傾向も指摘されています。防衛機制(心を守るための無意識的なクセ)が強まると、リストカットを「唯一の選択肢」と感じてしまい、罪悪感や自己否定のループが深まります。

心理の層 特徴・影響
神経生物学的 痛みで快感が生じる(エンドルフィン作用)、依存症状に発展しやすい
感情・愛着・防衛 感情コントロール困難・人間関係や自己像の不安定化、防衛行動の強化

感情にラベルがつけられない難しさ

自分の気持ちを言葉にできない状態(感情ラベリング困難・アレクシサイミア)では、もやもやした苦しさをうまく表現できず、ストレスが溜まりがちです。また、感覚情報処理障害がある場合、小さな刺激でも強い苦痛に感じやすく、このしんどさがリストカットのきっかけになることもあります。

自己否定・無力感・孤独感の連鎖

くり返されるリストカットの背景には、自己否定感や無力感、深い孤独、自己嫌悪の連鎖が見られます。「この苦しみから抜けられない」という絶望感は、自己破壊的な行動を推し進めてしまう要因ですが、これは誰にでも起こりうる心の反応です。決して「弱いから」ではありません。

理解のポイント

  • 自分責めも「生き抜くため」の働きの一つ
  • 孤独感や無力感が相談へのきっかけ、回復への第一歩につながる

トラウマ・継続的なストレス経験との関係

特別な出来事がなくても、小さな否定や傷つく体験の積み重ね(マイクロトラウマ)がリストカットの背景になることがあります。PTSDや複雑性PTSDがある方は、「またやってしまった」というジレンマや再体験に悩む場合も多いです。

環境・社会的なプレッシャー

いじめ・虐待・家庭不和・SNSなどの社会的な要因は、リストカットのリスクを高めます。「居場所がない」「受け入れられない」と感じることで、孤立感や絶望が強まってしまうのです。現代はSNSによる心の負担も増加傾向です。

発達障害・パーソナリティ障害との関連

ADHD・ASD、境界性パーソナリティ障害等がある方は、情動コントロールや衝動性、感覚の敏感さが原因でリストカットをくり返しやすい傾向です。自分の本音を伝えにくい・孤独や誤解を受けやすいことにもつながっています。

「気持ちをコントロールできないのは甘え」ではありません。それぞれの心理的な仕組みには深い理由があり、苦しみが続くときは「相談してもいいかも」と思える相手や場所を早めに探してください。

リストカットの悪循環とやめるための具体策

リストカットが「エスカレート」して抜け出せなくなるのは、脳と心の悪循環、本人の心理、具体的対処法の不足が重なっているからです。一時的に「楽になる感覚」があっても、本質的な苦しみを解消するには、行動や考え方を少しずつ変えていくことが必要です。ここでは今できる具体的な行動と、回復へのヒントを紹介します。

自傷行為が「習慣化」する悪循環モデル

リストカットは、「つらさ」から逃れるために始まりますが、直後にエンドルフィンなど快感物質が脳内で分泌されます。そのため、「少し楽になった」と感じることがあり、この体験が脳に刷り込まれます。再びつらさを感じた時には「また切る」という方向へ引き寄せられる―これが「強化される悪循環モデル」です。

段階 脳と心の反応 結果
ストレスやつらさを感じる 否定感・感情調節障害の悪化 孤独や不安が深まる
自傷行為 エンドルフィン分泌・快感 一時的な安堵
その後 罪悪感・自己否定の再発 さらに強まるストレス

重要なのは、「習慣化・依存化しやすい仕組み」が脳と心の両面にあるという点です。「意志が弱いから」ではありません。自分ひとりでは抜け出しにくいので、まずは「自分のパターンに気づくこと」から始めてみましょう。

悪循環から抜け出す2つの基本ステップ

悪循環を断ち切るカギとなるのが、「自分のパターンを知る」「代わりになる行動を覚える」=“置換スキル”の2ステップです。

  1. トリガー分析
    自傷のきっかけが何かを記録で“見える化”してみると、自分のパターンが分かります(例:夜一人になると衝動が強まる等)。
  2. 置換スキル
    自傷の衝動が湧いた時、安全な代わりの行動で気持ちをそらすこと。心理学的に効果のある方法を色々試すのが大切です。

この2つをくり返すことで、「やめられる日」が増えていきます。

代替行動(置換スキル)の具体例

置換スキルは大きく「刺激的タイプ」と「鎮静的タイプ」に分かれます。その時の気分に合うものを選ぶのが効果的です。

タイプ 特徴 具体例
刺激的タイプ 無感覚・現実感欠如タイプ向け
痛み欲求に似た衝動をコントロールする
  • 輪ゴムを強くはじく
  • 氷を握る・冷水に触れる
  • 運動・筋トレ・短いダッシュ
  • シャープな香り(ミント)
鎮静的タイプ 不安や衝動、イライラ時向け
気分を落ち着ける感覚を重視
  • 深呼吸・リラックス
  • ぬいぐるみや柔らかいものに触れる
  • 好きな音楽・歌・日記
  • お風呂で温まる

「自分で行動を選べる」だけで気持ちは大きく変わります。

本音の伝え方とセルフケア

言葉で伝えにくい時は、無理に話さなくても大丈夫です。絵や音楽、写真、メモなど非言語的コミュニケーションも使ってみてください。信頼できる人にスタンプや画像を送るだけでもOKです。

また、マインドフルネスや日記、ものづくりなど、五感でできるセルフケアも効果的です。「今この瞬間」に目を向けるだけでも脳の報酬系がポジティブになります。

感情の持続やコントロール困難への工夫

感情が長引く・激しい方は、

  • 深呼吸やリラクゼーション
  • 掃除や片付け、短い散歩
  • つらい思考に「今がんばってる」と声をかける

など、小さな行動で気分のリセットや自己肯定を目指してください。

心理療法・カウンセリングの活用

孤独や悪循環が抜け出せないと感じたら、一人で抱えず専門的なサポートを利用しましょう。
主な心理療法は、

  • 認知行動療法(CBT): 考え方や行動のクセを修正
  • 弁証法的行動療法(DBT): 境界性パーソナリティ障害や感情調節の問題に有効
  • EMDR: トラウマ・PTSD対応に特化した方法

です。合う方法を心理士と相談しながら選択できるので安心してください。

日常でできるセルフヘルプ

専門的支援とは別に、ご本人ができる小さな工夫も大きな力になります。

  • 起床・就寝時間の調整
  • SNSの時間制限
  • ストレッチや軽い運動

「できなかった日」があっても自分を責めず、できたことだけを認めてあげてください。

やめられた人の体験談

リストカットをやめられた方の多くは、「ひとりでは抜け出せなかったが、助けを借りて変われた」と話します。
失敗をくり返しながらも、少しずつ自分のペースでつながれる場所や理解者を見つけていきました。

カウンセリングやコミュニティで同じ経験の方と出会ったり、色々な置換行動を試行錯誤したりする中で、「本当の気持ちが話せた」「自分を受け入れられるようになった」といった小さな変化が積み重なっていったというケースが多いです。

「やめたい」と思った時から、リカバリーの道のりが始まります。焦らず、少しずつ“自分へのOK”を増やしていきましょう。

家族・周囲にできるサポートと相談先

リストカットと向き合う際、ご本人だけでなく家族や周囲の方も「どのように接すればよいか」悩みや戸惑いを感じることがよくあります。接し方次第で回復へ進める場合もあれば、逆に苦しみや孤立が深まることもあるため、否定や強制ではなく、気持ちに寄り添う姿勢が求められます。

“やめさせる”よりもまず「気持ちに寄り添う」こと

「一刻も早くやめてほしい」と思うのは自然なことですが、本人が求めているのは批判や説得ではなく、気持ちを理解しようとする姿勢です。リストカットは「苦しさや孤独、不安」が直接言えない時のSOSサインでもあります。「つらかったね」「ひとりで抱えて大変だったね」と共感を言葉で伝えましょう。

無理に止めるのは逆効果?安全基地の大切さ

多くの場合、リストカット本人も「やめたいのにやめられない」苦しい状態です。無理に止めさせたり、責める態度を取ると「心理的安全基地」が失われ、かえって孤立や自己否定が悪化します。守りたいのは「行動」ではなく「気持ち」──優しさと共感で、安心して失敗できる関係づくりを心がけましょう。

家族・友人の声かけガイド

何と声をかければいいかわからない場合、

  1. 批判やアドバイスではなく、共感を最優先しましょう
  2. 急がず、本人のペースに寄り添ってください
  3. 「力になれることはある?」と聞き
    無理に聞き出さず、安心できる雰囲気を保ちましょう

小さな共感そのものが、孤独感や自己否定感を和らげる力になります。

境界線の混乱・共依存・拒絶感受性の注意

本人と周囲の境界線が曖昧になったり、共依存の関係に偏ったりすると、お互いに苦しさが増すことがあるので要注意です。拒絶感受性が高い方では、些細な態度でも傷つきやすくなります。「相手の人生を全て背負う必要はない」と理解し、健康的な距離感を心がけましょう。

距離のとり方と見守り・介入のバランス

どこまで関わるか迷う時は、「見守る=そばにいる」「必要があれば助ける」バランスを意識してください。過剰な介入や無関心は、どちらも本人の安心感や自尊心を損ねる場合があります。

非定型な反応への対応

リストカットを繰り返す方は、一般的なアドバイスに反応しにくい(=非定型反応)ことが多く、本人のペースを尊重し、焦らず見守ることが大切です。変化が見えなくても「そばにいる」だけで大きな支えになります。

応急処置・傷跡ケアのポイント

傷ができてしまった時は、すぐ流水で洗い、清潔なガーゼや包帯で圧迫止血をして、安全のために受診を勧めましょう。出血が強い・傷が深い時や感染の不安がある時は専門医(形成外科など)へ。近年はレーザーや再生医療による傷跡ケアもあります(保険適用等は要確認)。

サポートと対応のポイント 具体例 注意点 相談先
気持ちに寄り添う姿勢 否定せず話を聴き、感情に共感 強制や説得、批判は逆効果 精神科・心療内科・カウンセラー
安全基地を意識した関わり 温かい雰囲気づくり、叱らない姿勢 介入・放任のバランスを保つ 医療機関・自助グループ

相談先の選び方

一人や家族だけで悩みを抱えきれない時は、専門的な相談先の活用をおすすめします。主な相談先は、精神科・心療内科・臨床心理士・公認心理師のカウンセリングです。
相談時には、「リストカットの対応経験があるか」「カウンセラーが専門資格を持つか」「雰囲気が合うか」など、自分に合う場所や人を選んでください。自治体やNPOの無料相談窓口も力になってくれます。

支援機関や自助グループとのつながり

誰かに共感してもらえること「つながる場所」があるだけで孤独は癒えやすくなります。地域やネットの自助グループ、チャットやSNSのコミュニティでも構いません。本人のペースで無理なく関わってみることが大切です。

再発防止と長期的支援

「やめられた=安心」ではなく、生活リズムや居場所、ストレス軽減、継続的なフォローも必要です。無理せず、小さな達成感を積み重ねられる環境をご本人と一緒に整えていきましょう。焦らず、一進一退の回復過程に寄り添ってください。

最も大切なのは「一人で抱え込まないこと」「話せる相手を持つこと」です。迷ったときはいつでも相談してよいのです。あなたの寄り添いが何よりの力となります。

この記事を通じて、リストカットの心理的な背景ややめられない理由、適切な支援や対処法についてご理解いただけたと思います。自分や大切な人を責めず、必要な時は専門家や周囲のサポートを得ながら、少しずつ前に進むきっかけになれば幸いです。
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