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親御さんインタビュー「“やりたい”を支えてくれる人がいる。レオンくんの成長を見守る日々」池谷さん

親御さんインタビュー「“やりたい”を支えてくれる人がいる。レオンくんの成長を見守る日々」池谷さん

この子には、きっと何か特性がある。

お母さんは、レオンくんが生まれた頃から、どこかそう感じていたそうです。

重度の知的障害があるレオンくん。

言葉で気持ちを伝えることが難しかったり、苦手な音や環境があったり、日々の中には今もたくさんの工夫が必要です。

それでも、お母さんは一人で抱え込むのではなく、療育施設、相談支援員さん、デイサービス、理学療法士さん、鍼灸院の先生、ガイドヘルパーさん、ドラム教室の先生など、たくさんの人とつながりながら、レオンくんの「やってみたい」を大切に育ててきました。

今回は、レオンくんの成長や日々の支え、そしてアートをきっかけに広がった可能性について、けみさんがお母さんにお話を伺いました。

生まれた時から感じていた、少しの違和感

レオンくんは、生まれた時はどんな様子でしたか?障がいが分かったのはいつ頃だったんでしょう。

池谷さん

生まれた時から、少し反応が薄いなという思いはありました。私自身は、ずっと「何かおかしいな」と感じていて。 2歳の時に子ども病院で検査を受けたんですけど、「何もないですよ」と言う先生もいれば、「自閉症ですね」と言う先生もいて、判断が分かれました。 でも私は、明らかに何か特性があるだろうなと思いながら育てていました。だから本当に、生まれた時から違和感はありましたね。

お母さんとしては、診断を受けて急にショックを受けたというより、もともと感じていたことがあったんですね。

池谷さん

そうですね。もちろん、はっきり障がいがあると言われた時はショックでした。しんどい時期もありました。 でも、障がいがあると分かれば、福祉制度が使えるじゃないですか。だからその時点で、「レオンの子育てはプロに頼ろう」と心を切り替えました。 一般的な子育てだと、自分の子育てを人に頼ることに抵抗があるかもしれません。でも、障がいのある子だからこそ福祉を頼れる。それは良かったと思っています。

「私の手には負えない」から、頼ることを選んだ

療育施設にはいつ頃から通い始めたんですか?

池谷さん

2歳の終わり頃から、一番近くの療育施設に通い始めました。 年齢を重ねるごとに、言葉が出ない、こちらの言っていることが理解しづらい、行動が少し独特だなということがはっきりしてきました。それで発達検査を受けて、3歳頃に重度の知的障害という診断になりました。 今も重度の知的障害で、知的には4歳くらいと言われています。ここから大きく上がることはないかもしれないとも言われています。

お母さんが早い段階で「頼ろう」と思えたのは大きいですね。

池谷さん

そうですね。お願いした療育施設の方がすごくしっかりした方で、相談にも乗ってくださいましたし、いろいろなサポートも紹介してもらえました。 私はもう「自分の手には負えない」と感じていたので、ヘルプを出せる誰かにつながれたのは大きかったです。 ただ、実際には自分からヘルプを出せない親御さんも多いと思います。制度が分かりにくいですし、こちらから助けを求めないと誰も気づいてくれないこともあります。

レオンくんを支える“療育チーム”

今は、どんなサポートを受けているんですか?

池谷さん

相談支援員さんという、いわば高齢者支援でいうケアマネージャーさんのような方についていただいています。 困りごとを相談すると、「こういう福祉サービスが使えますよ」「この手続きでできますよ」と教えてくださる方です。 デイサービスはもちろん使っていますし、外出の移動支援をしてくださるガイドヘルパーさんにもお願いしています。その方が水泳のインストラクターの資格を持っているので、水泳を教えてもらっています。 あとは、理学療法士さんに毎週一回来てもらって、身体の使い方や動きを見てもらっています。週に一度、鍼灸院にも通っていたり、ドラム教室にも通っていたり、たくさんの先生方がレオンの成長を一緒に見守ってくださっています。

まさにチームですね。

池谷さん

はい。今は「レオンの療育チーム」という形になっています。 私が困ったことを相談支援員さんに伝えると、相談員さんが療育チームの皆さんに連絡してくださって、どうしたらいいかをプロの方たちが考えてくださるんです。支援会議もいつも全員が出席してくれて、みんなでレオンの成長について話し合います。 本当に、皆さんのおかげで今のレオンが成り立っていると思います。

「ラジオ体操の指導員をやりたい」から始まった挑戦

レオンくん自身の「やりたい」は、どうやって伝えてくれるんですか?

池谷さん

少し前までは、おうむ返しでしか言葉が返ってこなかったんです。でも今は「やる」「やらない」の二択で聞くと、自分の意思を言えるようになってきました。 たとえば、「やる?」と聞くと「やる」と答えたり。少しずつ、自分の思いを出せるようになってきています。

ラジオ体操の指導員をやったというお話もありましたよね。

池谷さん

小さい頃から毎年、地域のラジオ体操に参加していたんです。中学生になると、地域の中高生が前に立ってラジオ体操の見本をする指導員になれるんですね。 中学一年生の夏に、「あんなのやってみたい?」と聞いたら、「やりたい」と言ったんです。 正直、最初は困りました。ラジオ体操と言っても、レオンは腕を上げているつもりでも、実際には半分くらいしか上がっていないこともあります。人前に立って指導員としてやるのは難しいかなと思っていました。 でも、本人が本気だったんです。

そこから練習が始まったんですね。

池谷さん

はい。翌年の春頃になってもまだ「やりたい」と言っていたので、「それなら練習しようか」と言いました。 NHKのラジオ体操を見ながら一緒に練習したり、療育チームの皆さんにも協力していただいたりしました。理学療法士さんは動きをパーツごとに分けて見てくださって、デイサービスでも練習して、ガイドヘルパーさんとも練習して。 本当に総力戦でした。

すごいですね。アスリートみたいです。

池谷さん

そうなんです。結果的に、翌年のラジオ体操では地域の指導員として、みんなの前でラジオ体操ができました。 完璧ではなかったかもしれません。でも地域の方々が「頑張ったね」と声をかけてくださって、知らない方からも「ずっと練習を見ていたよ」と言っていただきました。 デイサービスの先生も、朝早いのに応援に来てくださって。すごく温かい雰囲気の中で終えることができました。 もし一人で抱えていたら、きっと「無理だよ」と言ってしまっていたと思います。でも、周りの方たちが支えてくれるという安心があったから、申し込んでみようと思えました。

「嫌」と言えないからこそ、周りの理解が必要

今、困っていることはありますか?

池谷さん

レオンは「嫌」をはっきり言えないんです。それが一番しんどいところかもしれません。 たとえば、苦手な先生がいるんですね。同じ教室にいると、部屋の対角線を逃げるように動くくらい苦手な先生です。 学校にも、その先生とは距離を保ってほしいとお願いしていたのですが、修学旅行の時に、事情があってその先生と同じ部屋で過ごすことになってしまいました。 本人は「嫌」と言えないので、そのまま過ごすしかなかったんだと思います。帰ってきた時は、かなり疲れ切っていました。

それは本人にとってかなり大きな負担でしたね。

池谷さん

そうですね。学校側にも事情はあったと思いますし、悪気があったわけではないと思います。 ただ、レオンのように自分の意思を言葉で伝えることが難しい子にとっては、周りがどれだけ本人の様子を見てくれるかが本当に大事なんです。 他の支援先では、皆さんがよく観察して、何か起こる前に私に報告してくださったり、手を差し伸べてくださったりします。だから大きなトラブルはあまり起きません。 でも、本人が「嫌」と言えない以上、周囲の理解と配慮がないと、つらい経験になってしまうことがあります。

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アートが開いた、新しい可能性

レオンくんはアートにも取り組んでいるんですよね。

池谷さん

はい。2年前に通っているデイサービスでやっていたONEARTの企画で、レオンが絵を描いている場に私もお手伝いで行ったことがあったんです。 その時、レオンがすごく面白い筆づかいで絵を描いていて、「これは作品になるんじゃないかな」と思いました。それ以来、家でも筆を持たせて、作品を描かせてみるようになったんです。

それが作品づくりのきっかけだったんですね。

池谷さん

はい。その後、神戸の障害者芸術フェスタに応募したら、優秀賞をいただきました。 さらに、障がいの有無に関係ない一般公募のアートフェスタにも応募したところ、そこでも賞をいただいて。本人にとってもすごく励みになりました。 ゆめいくのアート活動がきっかけで、「作品を描いてもいいんだ」と思えるようになったところがあります。そこは本当に感謝しています。

素晴らしいですね。レオンくんにとっても、自信につながったんですね。

池谷さん

そうですね。今は本人の楽しみを見つけられることが、すごくいいなと思っています。

お兄さんもまた、アートに向き合う人

ちなみに、ご兄弟はいらっしゃるんですか?

池谷さん

はい。3つ上の高校3年生の兄がいます。通常の高校に通っていて、特性の強い子ではありますが、毎日頑張って通っています。 兄も絵を描いていて、スプレーアートや油絵が好きなんです。今は50号くらいの大きな作品も描いています。

すごいですね。かなり本格的ですね。

池谷さん

本人はまだ進路を決めきれていないところもありますが、私から見るとすごくアーティスト的な発想ができる子なので、伸ばしてあげたいなと思っています。 油絵の作品で公募展に出した時には、賞をいただいたこともあります。それが自信につながっているようです。

兄弟の関係はどうですか?

池谷さん

仲はいいと思います。上の子がとても優しいんです。 料理も趣味で、弟のレオンも料理をやりたがることがあるんですが、お兄ちゃんが作っていると「一緒にやろうか」と声をかけてくれます。 一緒にクッキーを焼いたり、スイーツを作ったり、釣ってきた魚を捌いたり。お兄ちゃんが優しく教えてくれて、兄弟でそういう時間を過ごしてくれています。

自分の楽しみを見つけられること

お兄さんもレオンくんも、それぞれアートに向かっているんですね。

池谷さん

そうですね。兄弟そろって、自分の楽しみを見つけられるのはすごくいいことだと思っています。 ただ、作品が増えていくと保管場所も大変で。普通の一般家庭なので、リビングや廊下にも作品が増えてきていて、どうしたらいいのかなと悩むこともあります。 でも、描かせてあげたい気持ちはありますし、どんどんやらせてあげたいです。

アートは、関わりやすい分野でもありますよね。本人の表現がそのまま出てくる。

池谷さん

はい。言葉で伝えることが難しくても、作品として出せるものがあるのは大きいと思います。

一人で抱え込まないことが、親子を支えてくれる

今日お話を聞いていると、レオンくんの成長の背景には、本当にたくさんの人の支えがありますね。

池谷さん

そうですね。療育施設、相談支援員さん、デイサービス、理学療法士さん、鍼灸院の先生、ガイドヘルパーさん、ドラム教室の先生。皆さんがそれぞれの立場で関わってくださっています。 私一人ではできなかったことばかりです。 レオンの「やりたい」に気づいた時も、私だけだったら止めていたかもしれません。でも周りの人が支えてくれるから、「やってみよう」と思える。 本当に、皆さんのおかげです。

「頼ること」って大事ですね。

池谷さん

はい。自分からヘルプを出すのは簡単ではないかもしれません。でも、助けてくれる人につながれたことで、レオンの可能性も広がりました。 これからも、本人の「やりたい」を大切にしながら、少しずつ自分らしく育っていってくれたらと思っています。

編集後記

レオンくんの歩みは、決して一人だけで進んできたものではありません。
お母さんが早い段階で「頼る」と決めたこと。
療育チームがそれぞれの専門性で支えてきたこと。
地域の人たちが温かく見守ってくれたこと。
そして、レオンくん自身が「やりたい」と伝えようとしてきたこと。
その一つひとつが重なり、ラジオ体操の指導員として前に立つ経験や、アート作品で賞を受ける経験につながっていました。
言葉で気持ちを伝えることが難しくても、本人の中には確かに「やってみたい」があります。
その小さなサインを受け止め、周囲が一緒に支えていくことが、子どもの可能性を広げていくのだと感じさせられるお話でした。

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