ウェルビーイングは、心も体も社会もまるごと元気で満たされた毎日を目指すための大切なキーワードです。本記事では、ウェルビーイングの基礎から、今世界で注目される理由、日本社会での最新動向、そして実生活や職場ですぐに取り入れやすいアイデアや実践事例までを、わかりやすく丁寧にご紹介します。あなた自身や周りの人が、自分らしく、幸せに過ごせるヒントをぜひ見つけてください。
ウェルビーイングとは何か:本質と世界の最新トレンド

ウェルビーイングは、今や世界中で「幸せな生き方」と「健康な人生」を実現するキーワードとして広がっています。日本でも働き方や人生観の多様化、ストレスの増加などを背景に、病気でないだけでなく心・体・社会すべてが満たされていることが本当の健康だと再認識されているのです。
ウェルビーイングは「健康+幸せを実感している状態」とも言い換えられ、自分自身や組織をより良く変えていくスタート地点となります。
心・体・社会がそろうことで感じる「満たされ感」
ウェルビーイングの語源は英語の "well-being" で、「良く在る」「良好な状態」という意味です。単に「病気ではない」「不調がない」という範囲を超え、心も体も、そして社会的にも自分らしく充実していることを指しています。
たとえば友人や家族、職場の仲間とつながりを感じたり、自分の存在意義を実感できる場面も、ウェルビーイングの一部です。WHO(世界保健機関)憲章でも「健康とは肉体的・精神的・社会的にすべて良好な状態」と明記されています。
主観・客観の両面から見るウェルビーイング
ウェルビーイングの面白さは「自分自身がどう感じているか(主観)」と「周囲や社会の状況(客観)」という2つの軸で考える点です。
主観的ウェルビーイングは自分の気持ちや幸福度が軸になり、客観的ウェルビーイングは収入や住環境、人間関係など外から測定できる事実が軸となります。
どちらかだけではなく、両方のバランスが大切です。数値上は健康でも、孤独や不安を感じていればウェルビーイングとは言い難いでしょう。逆に、困難な状況でも支え合いや前向きさがあれば満たされ感を持てるのです。
ウェルビーイングが今、世界的に注目される理由
近年、ウェルビーイングが注目を集めているのは、世界的な意識転換が背景にあります。
1948年にWHO憲章で「健康=心・体・社会すべて良好」とされたのが転換点です。さらに2015年以降、SDGs(持続可能な開発目標)の「すべての人に健康と福祉を」という目標がウェルビーイングと直結し、世界中で政策や取り組みの柱になっています。
幸福度ランキングやOECDのウェルビーイング指標の導入など、各国や企業が「人々の幸せ」を真剣に追い求めるようになりました。
幸福学とウェルビーイング:進化する健康観
ウェルビーイングの研究は、心理学の分野から「人間の強みにフォーカスしたポジティブ心理学」へと移り変わっています。
マーティン・セリグマン博士のPERMAモデルや世界幸福度ランキングなど、健康とは「病気をなくす」だけでなく、自分らしく充実して生きることにつながるという考えが広まっています。
| 主な項目 | 内容 | キーワード | 実例 | 関連背景 |
|---|---|---|---|---|
| ウェルビーイングの定義 | 心・体・社会的に満たされている状態 | 幸福、主観・客観的ウェルビーイング | WHO健康定義、幸福度ランキング | SDGs、世界幸福度報告 |
| 主観・客観の両軸 | 自分が感じる幸福+社会が示す客観指標 | QOL、ライフサティスファクション | OECDの指標、ギャラップ社調査 | 政策・現場評価指標 |
| 日本の課題 | 多様化する価値観・働き方・メンタル課題 | 働き方改革、心理的安全性 | 経済産業省の健康経営認証 | 高齢化・少子化対策 |
日本社会にも広がるウェルビーイングの価値
日本では近年、働き方改革やダイバーシティ推進が進む一方、メンタルヘルスやキャリア迷子など新たな課題も目立っています。
多くの企業や自治体が健康経営・ウェルビーイング経営へと舵を切り、福利厚生やコミュニケーション改革、ストレス対策など、職場全体で「自分らしく働ける社会」を目指す動きが着実に広がっています。
「一人ひとりの幸せが、社会の元気を生み出す」――そんな考え方がこれからの日本社会の基盤となります。
個人と組織で実現するウェルビーイング:指標と行動のポイント

ウェルビーイングを高めるには、自分の気持ちや日々の体験だけでなく、職場や社会の雰囲気づくりもとても大切です。本セクションでは、科学的なモデルと毎日の生活や職場ですぐ活かせるアイデアをご紹介します。
ウェルビーイングを形作る「五つの支柱」PERMAモデルと多面的な指標
心身ともに満たされた状態をつくるためには、感情・没頭・人間関係・意味・達成感など、いくつものピースが大切です。
PERMAモデルはポジティブ心理学の考え方から生まれ、ウェルビーイングを「5つの柱」でとらえます。ほかにも四つの因子モデル(感情・心理・社会・機能)や、健康診断や職場環境の快適さなどを含む五つの領域モデルなど、多角的な視点があります。
| モデル名 | 主な要素 | 主な活用法 |
|---|---|---|
| PERMAモデル | ポジティブ感情・没頭・関係性・意味・達成感 | 心理状態や職場満足度の調査、自己理解 |
| 四つの因子モデル | 感情的・心理的・社会的・身体的要素 | 主観的幸福感やQOL調査、セルフチェック |
どのモデルにも共通するのは「内面の幸せ」と「社会での体験」の両方を大切にすること。
「健康診断が良好でも満たされない」「忙しくても関係性が良ければ幸せ」など、バランスを見ることがポイントです。
目に見えない「心の土台」が支えるウェルビーイング
安心して話せる場や、チャレンジを応援し合える関係――こうした心理的安全性やレジリエンス(立ち直る力)、自己肯定感がウェルビーイングには欠かせません。
これらは決して「生まれつき」ではなく、日々のコミュニケーションや小さな成功体験を重ねること、仲間からの応援(ピアサポート)によって高められます。
組織や学校、職場で心理的安全性を育むことが、一人ひとりの元気につながります。
主観的な「健康感」とQOL、職場づくりの工夫
健康診断で問題がなくても「なんだか元気が出ない」「やる気がない」というときは、主観的健康感やQOL(生活の質)が下がっているサインです。毎日の小さな充実感や、人とのつながり、仕事へのやりがいが健康感を大きく左右します。
また、職場でも「エンゲージメント」(仕事への熱意や一体感)や「話しやすさ・リラックスできる環境」などが、満たされ感を劇的にアップさせます。
幸福度やウェルビーイングを見える化する指標・セルフチェック
「変化を実感できない」ときには、幸福度指標や簡単なチェックリストを活用しましょう。「1週間の幸福度を10点満点で記録」「困ったとき相談できる人がいるか」など、日々のセルフモニタリングから小さな気づきが生まれます。
職場なら「仕事が楽しい瞬間」「支え合いの実感」「目標達成のやりがい」などを共有することで全体の空気や意識も良い方向へ変わっていきます。
セルフケアの新常識:自分を思いやり、感謝を積み上げよう
セルフコンパッションとは、失敗や辛い時にも自分を責めるのではなく、「大丈夫」と受けとめること。
「ありがとう」「よく頑張った」といった感謝の言葉を日々伝えあったり、自分にも声をかけることで心の安定や活力もぐっと高まります。
- 「今日は自分にやさしくしてあげよう」と意識する。
- 感謝日記を書く・誰かにお礼やリスペクトを伝える。
こうした習慣が、ウェルビーイングを高める毎日の基礎になります。
ウェルビーイング経営と健康経営〜違いと重なり、実践事例

現代の企業や組織では、「健康経営」と「ウェルビーイング経営」が並んで重要視されています。どちらも従業員が心身ともに充実している状態を作るゴールは同じですが、アプローチが違います。
健康経営とウェルビーイング経営の違いと目的
健康経営は、主に従業員の健康促進や医療コスト削減を目的とする制度や仕組みです。健康診断や産業医面談、生活習慣病予防などを通して、元気で長く働ける環境を作ります。
一方、ウェルビーイング経営は「健康」だけでなく、心の満足・やりがい・人間関係・職場の雰囲気まで含めて総合的に充実した状態を会社・組織全体で育てる取組みです。
心理的安全性の向上や存在意義(パーパス)の明確化、レジリエンス(心の強さ)を重視する点が特徴です。
| 区分 | 内容 | 特徴例 | 役割 | 指標・効果 |
|---|---|---|---|---|
| 健康経営 | 従業員の健康管理・増進策 | 健康診断・産業医面談 | 生産性向上・リスク削減 | 健康データ・離職率 |
| ウェルビーイング経営 | 心・社会含めた職場の充実 | 心理的安全性・パーパス | 働きがいや組織文化の醸成 | 幸福度・エンゲージメント |
健康経営=科学的管理と制度、ウェルビーイング経営=心の満足と文化創出。どちらもすべての働く人の幸せを支えています。
働きがい・パーパス・人的資本経営〜会社も個人も育つ理由
働きがいやパーパス(存在意義)を大切にするアプローチが今、多くの組織で支持されています。「自分はここで必要とされている」という実感、「社会に役立っている気持ち」がエンゲージメント(仕事への熱意や誇り)を高めます。
人の強み(心理的資本=自己肯定感・レジリエンス等)を伸ばすことで、会社の持続的な成長や、社会から選ばれる組織へと変わる力が生まれるのです。
働きがいUPの取組み例
- パーパスワークショップで思いや目標を明確にする。
- 心理的安全性重視の話し合いでミスや意見も安心して出せる場を作る。
- 努力や成果へのポジティブなフィードバックや「ありがとう」の積み重ね。
SDGs・ダイバーシティ&インクルージョンとウェルビーイングの融合
SDGsやダイバーシティ推進も、企業価値や人材育成に直結する重要な視点です。ウェルビーイング経営は「だれもが働きがいや幸せを実感できる」社会の実現と深く結びついています。
多様性を尊重し合うことで組織の活力も高まり、全員が自分らしく健康で豊かに働ける風土が生まれます。
数字で見る効果:離職率や生産性・健康投資の測定
施策の効果は、「主観的・客観的」両面のデータで確認できます。
例えば、健康経営であれば医療費削減や出勤率アップ、ウェルビーイング経営なら職場満足度やエンゲージメントの上昇や離職率低下などが指標となります。
- 定期的に指標を見える化(サーベイや会議共有)することで、現状や課題をチェックできます。
- 離職率やプレゼンティーズム(出勤しているのに本調子で働けない状態)の改善、生産性向上など多くの企業で効果が報告されています。
先端のウェルビーイング経営事例と専門家連携
今では産業医・保健師・メンタルヘルス専門家・現場リーダーが一緒になって、身体面・メンタル・自己管理まで総合的に従業員をサポートする仕組みが整ってきました。
心理的資本を育てるワークショップやセルフコンパッション研修、パーソナライズされた健康プログラムも成果をあげています。
"一人ひとりの小さな行動が、職場全体を元気にする"――そんな時代が訪れています。
毎日の実践から広がる持続的ウェルビーイングの未来

「今日をもっと満たされた気分で過ごしたい」と思ったとき、その気づきがウェルビーイング実践の第一歩です。健康診断や小さな行動変化、仲間との支え合い、高め合い、テクノロジーや街ぐるみのサポートなど、多様なアプローチでウェルビーイングは実現できます。
ここからは、個人・職場・社会の視点から未来のウェルビーイングのヒントをまとめてご紹介します。
行動変容・自己管理で未来を拓く
普通の健康チェックにとどまらず「ここを変えてみよう」という小さなアクションを習慣にしてみませんか?
定期健康診断からアクションプラン作りまで、健康管理アプリや行動変容サポートプログラム(運動・食事・睡眠の習慣化支援)を活用すると、手軽に続けやすくなります。
| 施策名 | 対象 | 主な内容 | 効果 | キーワード |
|---|---|---|---|---|
| 健康診断活用プログラム | 個人・職場 | 健康診断後のデータ分析・行動サポート | 生活習慣病予防・健康維持 | 健康診断・行動変容 |
| セルフマネジメント研修 | 個人 | 健康習慣・自己管理スキル強化 | ストレス耐性・生活改善 | メンタルヘルス・自己効力感 |
ピアサポートとコミュニケーションで広がるウェルビーイング
ウェルビーイングを実感しやすいのは、支え合い・応援し合い・話しやすい関係があるときです。
ピアサポート(仲間の励ましや共感)や、心理的安全性を重視した職場環境づくり、1on1ミーティングや感謝の声がけなど、「小さなコミュニケーション改革」が大きな安心感につながります。
生活習慣のセルフマネジメントで心身の調子を安定
健康のためには「これなら続けられる!」と思う小さな挑戦が大切です。食事バランスを意識したり、1日15分のウォーキング、毎晩の睡眠時間を少し増やすなど、自分に合う方法でOKです。
健康アプリ・睡眠アプリ・ストレッチ動画なども積極的に活用しましょう。
「難しさより“できることを少しずつ”」を大切に、続けやすさ・自己効力感(自分にもできるという感覚)を高めてみてください。
働く環境も「心地よさ」を重視した設計に
職場の環境が変われば、心の元気や集中力も高まります。「自然の光や緑・バイオフィリア」「リフレッシュできる空間」「フレックスタイム・テレワーク」など、柔軟な働き方や環境デザインは生産性や働きがいにも直結します。
自分らしく過ごせる職場が、イキイキと働ける毎日の秘訣となります。
社会全体のウェルビーイング:テクノロジー・サステナビリティ・イネーブリングシティ
個人や職場だけでなく、テクノロジーの力や都市全体のしくみが健康や幸せを土台から支えてくれる時代が始まっています。アプリやウェアラブルデバイスによる健康管理支援、すべての人が生きやすい街「イネーブリングシティ」など、サステナビリティ(持続可能性)を重視した社会設計も進化中です。
自分の小さな選択や声かけ、挑戦が、社会全体のウェルビーイングにもつながっていきます。